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新槇町ビル別館第一2階
2015年5月1日
IT業界の推移/インターネット関連の業態が伸長
―― 情報化投資の推移 ――
下の図表は、民間企業の設備投資金額の推移と情報化投資(情報関連機器の購入・情報システムの構築費用等)、それに広告費(電通「日本の広告費」)と印刷出荷額(工業統計
2015年3月確報)を比較したグラフである。
情報化投資は、コンピューター等のハードウェアの価格が下がり、処理能力の向上等で、投資の主役はハードウェアからソフトウェアに替わり、さらにクラウドコンピューティングの登場などで、サービス化の傾向をたどっている。ITサービスの提供企業は、役務や成果物の供給から、運営サービスなど包括的な業務の請け負いへと変化している。
この「サービス化」というのが、ビジネスにおけるチャンスであり、同時に競合を進める原因にもなる。
例えば、従来、印刷をして封入をし、特定の地域や対象へ送付すれば完結していたダイレクトメールサービスも、顧客データの分析から、データにもとづくエリアマーケティング、AR(Augmented
Reality<拡張現実>)技術の導入など、IT化してきている。普通のサービス会社がITサービスを加えることができ、またIT企業が、ITをベースに既存のサービス(広告や印刷等)に付加価値を与えて提供できるようになってきた。
次のグラフは広告費と印刷産業出荷額の前年比の推移を比較している。広告費は、2012年からプラス成長で推移しており、後れて印刷業も、マイナス推移から脱していないとはいえ、回復の兆しがうかがえる。2014年、2015年は期待が持てるのではないだろうか。
しかし、同業者のみならず、異業種との競合も増えていくことになり、そこでのポイントは、やはり情報化投資の流れにどう乗るかである。
―― 情報化投資も営業力強化 ――
下のグラフは、東証一部上場企業とそれに準じる企業4,000 社の「IT投資における中期的な投資重点分野」を調査した結果である。情報投資も基幹業務系から情報系(コミュニケーション/事務処理の効率化/意思決定支援などのためのシステム開発)へと主軸が移り、さらに販売実績などにつながるコアな領域へと変化してきている。ITのシステム開発能力だけではなく、マーケティング解析能力や支援サービス力も問われてくることになるだろう。
広告や印刷、マーケティングサービスを提供する企業にとっては、ITを強化することがビジネスチャンスにつながるとも言える。情報化投資の予算の一部を、マーケティング予算として獲得する流れを作ることが、これからは大切なことになる。
―― 情報通信業の名目生産額の推移 ――
情報通信業は、ソフトウェア開発業や情報処理業のみならず、通信業、放送業、そして広告業、新聞業、出版業、印刷業などで構成されている。それぞれの名目生産額の推移を示したのが以下のグラフである。
ソフトウェア業および情報処理・提供サービス業の双方で、2008年あたりから成長が止まり、それと交代するように伸長してきたのがインターネット付随サービス業である。
インターネット付随サービス業の定義は、以下の通りである。
情報サービス業とインターネット付随サービス業の1事業所当たりの売上高の伸び率を比較すると、次のグラフのようになる。
―― 情報産業も伸び悩みか――
情報サービス業(ソフトウェア業と情報処理・提供サービス業を含む)の1事業所当たりの売上高(調査対象企業数が調査の年により異なるため1事業所平均で比較)の推移を示したのが、次のグラフである。
ソフトウェアの受託開発や計算・情報処理業務などの発注額の増加は、あまり期待できなくなってきており、従業者1名当たりの売上高の推移も低調になりつつある。2013年からは回復基調になってはいるが、かつてのような大きな成長は難しいのではないだろうか。
一方のインターネット付随サービス業の業績(同様に1事業所当たりの売上高等)の推移は、サイト運営業務を中心に堅調である。サービスの中では、ホスティングサービスが、提供会社の増加と中小企業や個人向けのサービスなどの競争の激化で価格の下落が進み、企業当たりの売上の上昇は、期待できなくなっていると見ることができる。また、コンテンツの提供も、2014年に再び上昇してはいるが、その運用等での実績(利用者の増加、付随ビジネスへの発展)を求められる方向がクライアントからは強まると予見できる。
情報サービス業は、金融や公共システムなど大型の開発案件とともに成長してきた。建築業界のゼネコン体制のように、多重下請け構造があり、中小IT企業を含めればおよそ4社に1社が下請け主体のIT企業であると言われている。近年は大型案件も少なくなり、海外展開への支援など大手ではないと難しい仕事などもあり、下流にある情報サービス会社は厳しい状況になりつつある。
そのため、中堅クラス以下の情報サービス会社も下請け構造からの脱却を図り、エンドユーザーとの直接取引を志向しなければならなくなってきた。
そこで注目されるのが、成長余地のあるインターネット関連のITビジネスである。
以前はIT業界も、資金力や技術力の差が大きかったが、クラウドコンピューティングの普及で、自前のシステムがなくても外部調達が可能になり、付加価値をつけたサービスとして再販できるようになった。システムの開発力よりも、既存のシステムやサービスをコーディネイトしてソリューションする業務の需要の方が、今は高いと言えるだろう。中小IT企業も、業者間のネットワークやコンサルティング力の強化などでITサービスの拡充を進め、クライアントのビジネスの支援というコアな部分へと進出していくことが予想できる。
―― 事業所数比較 ――
以下の図表は、情報サービス業、インターネット付随サービス業、広告業、印刷業など、事業所向けのサービス業の事業所数である。
いずれの産業も、中堅規模の企業がその多くを占め、全国に存在している。
中堅中小企業へのITサービスは、中堅中小のITサービス会社が当たるとすると、同様にCRMや販促などのマーケティングを重視したIT商材の販売も、中小規模の企業に向けて活発化していくと予想できる。インターネット広告やCRMと連動したダイレクトメール業務などを、IT会社が請け負うケースも増えるだろう。
少子高齢化を迎え、経済の根本が揺らいでいる日本では、自社や自社の業界が厳しい時、他社や他の業界も同様に厳しい。少しでもビジネスチャンスがあれば、異業種の領域でも取り込もうとする企業が増える方向にある。ワンストップやフルフィルメント対応が課題なのは、何も印刷や広告業界に限ったことではない。
これからは自社の業界のみならず、近隣のビジネスの動きも捉えなくてはならない。同業他社との取引のみならず、強みを活かせ、弱点を補強できるような異業種とのパートナーシップの構築が、より重要になってくるだろう。
異業種との業務提携のニュースが新聞で報じられているが、危機感や先を見た戦略で、資金力、技術力、ブランド力がある大手ほど提携には積極的である。
中堅中小の企業も、こういった新しい体制作りを常に意識し、実際に構築していかなければならないのではないだろうか。
必要なパートナー会社とあらかじめコンタクトを取っておき、営業訪問やプレゼンテーションの席に同席してもらうなども、営業手法の一つである。クライアントから見れば、頼もしい会社に映ることだろう。
本レポートは、弊社マーケティングレポート制作上の仮説構築のためのデータ分析や情報入手、途中経過を報告しているものです。
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