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見出しBUSINESS & MARKET REPORTS

2014年 10月22日

グローバル印刷産業の方向性

パケージ分野とデジタル印刷に期待/日本も同様の傾向

―― 先進国はどこも市場は成熟化 ――

以下の図表は、主要国の印刷産業出荷額とGDP(名目)の比較である。図表からもわかるとおり、日本におけるGDPと印刷マーケットの差から、他の国と比較し、印刷産業の産出物がリッチであることが想像できる。今から少し昔、この理由を大手の印刷機材メーカーに訊ねたところ、日本は高精細な印刷物を求めるところがあり、単なる情報の伝達としての印刷物ではなく、作品としての価値まで高めているからである、という説明をいただけた。たしかにそこには、職人の技や拘りが息づき、読み終えた雑誌ですら、捨てがたい理由があるような気がした。


   ところがいつしかデジタル技術により、すべてが高品位の必要はなく、例えば情報誌の写真ならばフラットベッドのスキャナーによる画像処理で済ませるような考え方が根付き、デジタルカメラが、プロレベルの使用に耐えられるようになるに至っては、ポジフィルムの必要性もなくなってしまった。

これは制作サイドのデジタル化による、コストの最適化であったと言える。

さらに近年は、ユーザーサイドからのコストの最適化が図られつつある。

よりコストが安く効果的な販促方法や印刷物が求められるようになってきたわけだ。その流れからすれば、日本の印刷産業は、残念ながら今後もまだ、他の諸国との差を縮めるように出荷額を減少させ、対GDPの比率を縮小させることが予想できよう。

しかし、印刷需要の伸び悩みは日本に限ったことではなく米国、英国、ドイツ、フランス、イタリアなど、先進国と呼ばれる国はほぼ同様な傾向をたどっている。従来通りの印刷物は、基本的に需要は伸びないと考えるのがやはり妥当だ。


―― グローバルに見た印刷産業の傾向 ――

 印刷産業の世界市場は、中国やブラジルなどが市場の成長部分を支えるが、先進国の多くはマイナス成長となる。そして世界的な方向性として、以下が指摘されている。

1.商業印刷、出版印刷、新聞印刷など印刷産業を支える大きな需要は伸び悩み、
  印刷産業出荷額のこの分野での伸長は難しくなっている。

2.伸びる余地の大きい印刷分野はパッケージやラベル印刷であり、デジタル技
  術により付加価値化が進められる。

3.パーソナライゼーション、オンデマンドといったデジタル印刷需要は継続し
  て堅調である。

4.コストの点でオフセット印刷が主流であり続けるが、伸び率で比較すれば、
  上記「3.」の理由により、デジタル印刷が伸長する。

5.印刷物が情報の一方的な提供ではなく、相互情報交換の媒体となる。
 (QRコードやパーソナルURLの付与に代表される)

6.印刷業は、印刷物という製品の供給からサービス提供の企業へ自らを変革
  する必要がある。

7.環境に優しいなどが、ベーシックな条件として尊重される。


 つまり日本だけがこの流れに逆らうことはできないわけであり、どの印刷会社も、この潮流に備えた体制が求められるわけだ。

 以下の図表は、日本の印刷分野別の出荷額を調査した結果である(※100名以上の事業所が調査対象)。
 印刷分野では、大きく落ち込んでいるのは出版印刷であり、商業印刷物も出版印刷ほどではないにせよ、マイナス成長を継続させている。一方で伸長しているのは「包装印刷」と「建装材印刷」である。




 次の図表は、日本の印刷方式別の出荷額を捉えたものである(※同上)。

 「その他印字方式」(「転写、インクジェットなどによる印刷」と定義)の多くは無版のデジタル印刷が該当すると考えると、我が国においてもこの分野の伸長は、三年ごとのCAGR(年平均成長率)で見ても上昇傾向にあり、健全な成長過程にあると見ることができる。

   また、包装印刷や建材印刷の需要と関係があるグラビア印刷方式も伸びている。印刷という技術が、書籍やチラシ、カタログなどの平面な紙の上のものだけでなくなっていることを物語っている。



   これからの時代、こういった流れを常にウォッチし、設備や技術や人への投資の方向性を見誤らないようにしなければならないわけだ。


―― 印刷の入り口が変わる? ――

 海外の調査会社のSmithers Piraによると、2024年までの予測で、世界のデジタル印刷市場は堅調に推移し、2013年の1,310億ドルから2024年は2.25倍の2,900億ドルを超えるとされている。現在主流の電子写真方式が金額、数量市場ともに当初は多くを占めるが、インクジェット方式が伸び、2024年には金額で56%、数量で53%までを占めるに至るとされている。

 デジタル印刷が伸びる背景には、マーケティング戦略がターゲッティングを重視し、印刷物のコンテンツと提供のタイミングが対象や目的に合わせてより細分化される方向が読み取れるからとされる。そしてデジタル印刷の対象物も、グラフィックからパッケージやラベル印刷を超え、さらに布や他の立体物(金属やガラス)、そして電子分野やバイオメディカルにまで及ぶとしている。

 デジタル機は従来の印刷機に比べれば、導入コストが低いため、デジタル技術の普及とともに、印刷業の業際も次第に変わってくる可能性がある。新しい分野へチャレンジする印刷業が増えることになるだろう。また、一部では異業種からの参入も予想できる。デジタル入稿やテンプレートの利便向上と、それらを直接出力できるデジタル印刷機の存在で、マンションの一室で窓口だけを運営する印刷通販会社などがすでに存在する。

 例としては少ないが、ユーザー企業がデジタル印刷機を導入し、改訂の度に在庫 を破棄していたカタログをオンデマンド化したり、製品の販売対象や時期に合わせてパッケージのデザインを多様化し、販売効果を上げたりしているケースもある。今後は印刷会社がもっと先回りして、それをやらなければならないのだ。

 現状、多くの印刷会社のオンデマンドのメニューは、「オンデマンド(必要に応 じて)」ではなく、「小ロット印刷(オフセット印刷の下位の領域)」の範囲に留まっているように思える。「必要な時」を知り、さらに提案してそれを創出するとなると、やはり顧客企業の内情にまで踏み込まなければならない。顧客の多くは、潜在的にそれを求めているはずである。

 出口(出力機)側の準備が万全でも、入口(川上側)の提案力をつけないと、オ ンデマンドではなく小ロット印刷の仕事に終始することになってしまう。これまでは小ロットカラー、それにバリアブルプリンティングなどを加え、新しい市場を開拓できたが、価格や納期面の競争は依然として厳しい。差別化のためや新しいデジタル印刷物を創造する意味でも、印刷会社のアイデアやマーケティングの提案力がより重要になってきているゆえんである。


本レポートは、弊社マーケティングレポート制作上の仮説構築のためのデータ分析や情報入手、途中経過を報 告しているものです。


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