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見出しBUSINESS & MARKET REPORTS

2014年8月27日

印刷産業 10年分析(3/3) 従業者規模別の動向

事業所規模別/規模の大小に関わらず厳しかった10年

―― 4人以上の事業所は依然減少 ――

 平成24年調査の印刷業の事業所数(従業者3人以下事業所含む)は、28,247事業所で、平成23年との対前年比プラス8.0%となり、2009年以来の増加となった(経済産業省 平成24年「工業統計調査」結果より)。

 しかし、この1年間で増えたのは「3人以下の事業所」で、4人以上の事業所のみで比べると、前年比で−9.5%の減少となる。4人以上の事業所の人数が減り、3人以下のクラスに移行する場合もあり、ある程度の規模をもった印刷業としての事業所の増加は、認められなかったと考えた方が良いだろう。
 また、その「3人以下の事業所に」についても、次年以降も伸長が継続するかどうかは難しいところである。


 次のグラフは事業所の従業者の規模別に、事業所数と出荷額を経済産業省の「工業統計調査」から集計したものである。

 事業所数では従業者4人以下が8割近くを占めるが、出荷金額では50人から199人の中規模の事業所が多くを占める。金額の上で、このクラスの事業所が、印刷産業を支えていると言えるだろう。




―― 利益率がより厳しい、小規模事業所 ――

 では利益率の推移はどうか。次のグラフは従業者規模を三つの区分に分けて集計した結果である。平成33年は、平成14年から平成24年の減少率から10年後の出荷額と費用(現金給与総額、原材料使用額等)を算出し、そこから得た利益率である。グラフのとおり、規模の小さい印刷会社ほど、利益率が厳しくなる傾向が読み取れる。




――従業者規模別、印刷産業の動向 ――

 次から連続で示すグラフは、平成14年から平成24年までの出荷額等について、従業員規模別にその推移をCAGR(年平均成長率)で表したものである。数字のパーセンテージは1年間の平均である。

 最初に全体の数字の推移を示すが、印刷産業(市場)全体の動きと捉えていただきたい。続いて1事業所当たりの数値で同じ項目を比較してみる。事業所ごとの推移(1事業所の平均)は、こちらに現れている。

■事業所数の推移
 事業所の減少はどの事業所規模のグループでも起きたが、規模の小さい事業所グループほど減少率が大きかった。「300人〜499人」「1,000人以上」ではわずかだがプラスで推移している。


■従業者の推移
 従業者の減少は、事業所の減少とほぼ同じ動きとなっている。事業所の閉鎖や併合とともに、従業者は異動だけではなく退職も相当数あったと考えられる。

■出荷額の推移
 出荷額についてはどの従業者規模でも低調で、小さい事業所のグループほど落ち込みが大きい。なお、出荷額は事業所の減った分も減少するので、この数値が個々の事業所の売上の減少を表しているものではない。「1事業所当たり」で算出した結果も後に示すので、そちらを参考されたい。


■原材料使用額の推移
 原材料の使用額の推移は、むしろ大きい事業所のグループの方が、わずかだが減少率が大きい傾向が読み取れる。


■現金給与総額(人件費)
 事業所や従業者の減少と合わせて、現金給与総額の推移もほぼ同じ傾向になっている。後に示す事業所当たりの金額ではないので、従業者の給与がこのパーセンテージで下がったわけではない。事業所の閉鎖にともなった従業員の退職等による減少額が含まれている。



―― 従業者規模別、事業所の動向 ――

 次からは1事業所当たりと1従業者当たりの数値を示す。
 例えば、1事業所当たり出荷額は「全体出荷額」÷「事業所数」である。
   貴社の経営実績と比較することができる数字である。


■1事業所当たり従業者の推移
 従業者の規模別で大きな差異はなく、従業者の数も変動していない。人を減らしていない代りに、閉鎖された事業所の従業者を受け入れられていないとも見ることもがきる。

■1事業所当たり出荷額推移
 傾向としては、大きな事業所の方がやや厳しい推移を示している。小規模事業所は事業所数の減少の結果、残った事業所の売上減が少なくてすんだようだ。中大規模事業所向けの中・大口の印刷業務の仕事量の減少や、単価の低下があったと推定できる。


■1事業所当たり原材料費の推移
 規模の大きい事業所ほど、原材料費が減少している。出荷額の推移と合わせてみても、仕事量の減少がやはり要因としてあるだろう。反面、中、小規模の事業所では原材料費の上昇が認められる。


■1事業所当たり人件費(給与総額等)の推移
 事業所当たりの人件費では、全般的に緩い下降傾向にある。小規模企業では若干その減少率が大きく、原材料費の上昇と合わせて考えると、利益確保のために削減が難しい原材料費ではなく、主に人件費で調整されたと考えられる。これは給与水準の引き下げというよりも、次に記述するとおりである。


■1従業者当たり人件費
 従業者一人当たりの人件費で見ると、一人当たりの費用が、全般的に下がっている。規模の小さい事業所ほど、その率は若干だが高い。契約社員や派遣社員、アルバイトの採用などの他、業務量の減少による残業費等の自然減なども、背景として考えられる。

■1事業所当たり利益額の推移
 1事業所当たりの利益額はどの規模でもマイナスで推移した。特に「1人〜3人」規模の事業所が厳しかった。中小規模の事業所では、売上が伸びない上に原材料費の上昇があり、人件費で調整したが利益の減少は免れなかった。大手事業所では、原材料費の削減を主に進めたが、やはり減益は避けられなかったようだ。

■1従業者当たり出荷額
 1従業者当たりの出荷額は、1事業所当たりとほぼ同様の傾向となった。規模の大きい事業所ほど1従業者当たりの出荷額が下がる傾向があり、規模に見合った仕事が減った結果と推定できる。


 次の表は、「事業所当たり」と「従業者当たり」の主要な数値である。小さな事業所ほど、一人当たりの出荷額と人件費(給与総額)が少ないことがわかる。特に3人以下では、家族経営のため無給で働く従業員の姿も想像できよう。

 次の表は平成14年から、仮に算出した平成33年までの出荷額や利益率の変化を示したものである。今後、一番経営が厳しくなるのは3人以下の事業所で、出荷額の伸び悩み、人件費の調整の限界、さらに原材料費の価格上昇が合わさって利益が圧迫されるだろう。

   しかし地場に根差した営業で、昔ながらの顧客や近隣の商店から仕事を請けて、今後も存続していくだろう。マイナスの影響として大きいのは、印刷通販の普及と後継者や従業員の不足かもしれない。



―― 「小さい」=「小回りが利く」というブランディング ――

 規模の小さい会社ほど経営の状況が厳しいのは事実だが、それでは従業員の規模の違いによる圧倒的な格差はあるのだろうか。
 小さな事業所は、地元の自営業との結びつきが強く、中規模以上の印刷会社は、そのすべてにまでは手が回っていないのではないか。もし規模の優位がすべてならば、もっと早くに、この事業所の規模別の構成は変わっていただろう。

 大手には大手の厳しさがある。大口の仕事が増えず、印刷物の多くは小口化し、値引きを要請されている。数値で見る限り比較的安定しているのは、30人から50人規模の事業所だが、それでも印刷需要の地盤地下の前に売上の増加は見込めそうにない。

 やはり、どの事業規模の印刷会社も、自社の事業領域を確保しつつ、デジタル関連の仕事を増やすなど、印刷周辺業務の拡大がポイントになるだろう。もちろん、従来の印刷業務にも力を入れながらである。

 幸いデジタル技術は機械とは異なり、大きな社屋も莫大な資金も必要としない。逆に、小さい会社でも躍進できるチャンスがある。印刷業務も含め、企業のニーズはますます細分化し、個別化している。小回りの利く小さな印刷会社が求められる状況が、むしろ強まっていると言えるのではないだろうか。

  <参考>

事業所数、出荷額、利益の推移(印刷産業全体)      集計元データ(数値)


※本レポートは、弊社マーケティングレポート制作上の仮説構築のためのデータ分析や入手情報、途中経過を
   報告しているものです。

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