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見出しBUSINESS & MARKET REPORTS

2015年1月14日

消費者マーケットの展望

消費の傾向/マインドの下降と給与の減少で消費が変化

―― 消費者のマインドの推移 ――

 下のグラフは、毎月公表される内閣府の消費動向調査の数値を、各年で単純平均して推移を示したものである。大きな流れとして、消費者の収入や暮らし向き、雇用に対する意識は、徐々にネガティブになっていることがわかる。


 これに平均給与(国税庁「民間給与実態統計調査」源泉徴収義務者の給与調査)と完全失業率(総務省「労働力調査」)を合わせたものが次のグラフである。
 国内経済が弱含みとなり、完全失業率が上昇し、平均給与の低下とともに消費者の意識も下降トレンドをたどっていることがわかる。


 給与の下降に失業率の上昇や高齢化による給与受給者数の減少が加わるので、年金受給者を除いた一つの消費者としてのマーケットは、今後、徐々に縮小していくことは明らかであろう。

 給与等の減少で、具体的にどのような結果が現れたのかを、一例として乗用車の保有と販売についてまとめたのが次のグラフである(※給与の数値は国税庁「民間給与実態統計調査」。前述と異なり給与所得者1年勤続者のもの)。


 給与の上昇が頭打ちになるとともに、新車販売台数の比率(登録台数との対比)が下降曲線に向かった。保有台数としては小型車に替わり軽四輪車が増えてきた。

 次のグラフは新車の使用年数を表しているが、年数が長くなっていることがわかる。経済の好調期にはいったん使用年数が短くなり、そして2000年ごろから再び使用年数の伸び率が高くなっている。

 もちろん、収入の面ばかりでなく、若者の自動車離れなどの価値観の変化や、メディアや娯楽の多様化などで、車に割り当てられる時間の減少からくる価値認識の低下もあるだろう。とはいえ、平均年収がもっとも高かった1987年の467万3,000円と2013年の413万6,000円の間には、53万7,000円の開きがある。この差はやはり大きいと言わざるを得ない。

 ちなみに家電品等について買い替えまでの期間(内閣府「消費動向調査」では使用年数と表記。消費者へのアンケート調査のため、必ずしも実態を反映しているとは限らない)を比較したのが以下である。
 掃除機とテレビの使用年数の減少がうかがえ、一方で年数が伸びているのはルームエアコン、パソコン、携帯電話である。

 使用期間の変化の理由を探る上で、買い替えの理由(以下のグラフ)を見ればある程度推定できる。テレビや掃除機は「上位品への買い替え」が増加した結果、買い替えサイクルが早まった。テレビはデジタル放送への移行なども背景として大きいだろう。掃除機は、身の回りをクリーンに保ちたいという健康志向が、一役買っているのかもしれない。
 一方のルームエアコンは、故障するまで買い換えない消費者が増える傾向にあると見ることができる。賃貸の場合は部屋の貸主が管理することや、取り替えるとなると室内外で技術者の設置工事を要することなども買い替えを鈍らせる要因かもしれない。実用面が重視されるため、新製品の機能が訴求しにくいこともあるだろう。

 なお、パソコンや携帯電話については、スペックの安定や新種のサービスの普及度合いなどから、買い替えまでの期間は長くなる方向にあると読むことができる。










今後も収入の伸びが期待できないとなると、製品の買い替えサイクルは全般的に長くなると予想できる。給与に余裕があった時代は、たいして使わない自動車や家電品でも購入したが、使い道や、使用頻度・時間を考慮して、消費者は購入品を選択するようになってしまった。優先順位が厳格化され、選択される商品とされない商品との間で、格差が広がることも考えられる。

―― 消費者とのコミュニケーション ――

 スズキの軽自動車「ハスラー」が、車離れ世代の20代や30代に好調な売れ行きとの報道があった。実用性よりもレジャーなどでの利用シーンを提案できたことや、色の選択幅を広げたこと、内装の素材にこだわったこと、ファッション性で街乗りの若者にも支持されたことなどを人気の理由としている。
 これまでにない軽自動車を作ろうという気運が営業と技術の双方で高まり、開発に着手したが、年代などで購買層の想定はあえてせず、利用シーンを基本に開発に力を入れたという。
 ちょうどその頃、「雪道に強い軽自動車はないものだろうか」という声が会社の上層部へ届いたことなどもあり、潜在的なニーズはあったのかもしれない。
 結果として、作り手と潜在的に欲していた購買層との思いが一致した。

 そういう商品やサービスを、意図して開発できるようになるには、やはり日ごろのコミュニケーションが大切なのではないだろうか。消費者の声を聞き取るマーケティングリサーチではなく、「共創」(顧客とともに商品やサービスを作る)が注目される背景でもある。

 しかし、消費者の声をただ単に反映しただけでは、消費者が満足するものは作れない。消費者は、ほしいもの、今後ほしくなるものをイメージしたり言葉にしたりすることが実は苦手であり、基本的にはできないのである。コミュニケーションを経て、それを代弁できる人材がいて、はじめて受け入れられる商品が誕生する。「馬車全盛の時代にニーズを聞いても“もっと速い馬がほしい”という回答になるだけで自動車をイメージすることはできない」というのは有名な話である。


―― 新しい購買層の開拓 ――

 少子高齢化や家計の緊縮等で市場の伸びが期待できないとなると、リピーターの確保に向けて、顧客情報の管理と運用が重視されるようになる。

 また一方で、他社リプレースやブランドスイッチだけではなく、これまで顧客として取り込めていなかった購買層を、どう導き入れるかも考えなくてはならない。消費人口と消費金額の減少の時代を迎え、新規の顧客を開拓できない企業は売上の維持すら難しくなるだろう。普及率の高い商品、例えばルームエアコンの例ならば、買い替えを促進する施策なども求められる。

 広告やダイレクトメール、チラシの量や規模を拡大すれば、ある程度の効果は得られる。しかし、スズキの「ハスラー」の例にあるように、新しい商材の開発が前提になることもあり、企画段階からのターゲットとのコミュニケーションが求められることになる。

 広告や印刷、マーケティングを担当する企業は、商品の開発の段階からクライアントの活動に参画し、コミュニケーターとして機能することが、今後はますます重要になるのではないだろうか。

本レポートは、弊社マーケティングレポート制作上の仮説構築のためのデータ分析や情報入手、途中経過を報告しているものです。

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