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見出しBUSINESS & MARKET REPORTS

2014年8月22日

印刷産業 10年分析(2/3)都道府県別の動向

都道府県別分析/最大市場規模の東京都が総合ランクで32位と下位に

―― 印刷産業出荷額に影響を及ぼす地域要因 ――

ソリューションプロバイダーとして新しい事業領域を拡大する必要性は、あらゆる規模の、あらゆる地域の、あらゆる種類の印刷業に求められるだろう。
 しかし一方で、売上の80〜90%以上を占める従来からの印刷業務についても、やはり手を打たなければならないのが実情だ。

その一つに営業エリアの拡大や見直しがある。その前段階として、自社の本社や拠点のある地域の趨勢を、事前に把握しておくべきではないだろうか。

実際のところ、印刷業は地域に根差したビジネスなので、同じ県内でも、市や町で印刷需要も変化する。とはいえ、昨今聞かれるような「人口減少地域」などについては、根底からその地域の趨勢を決めてしまう可能性もあるので、事前に把握しておくに越したことはない。

その結果、自社の拠点が比較的有望な地域にあり、売上高の伸び率がその地域の平均を下回っているようならば、原因を突き止めて対策を打たなければならない。 もし問題のある地域ならば、新規進出や拠点の見直し、拠点間の人材の再配置などを検討する必要もある。

下のグラフは、印刷産業出荷額とGPP※、全事業所数(印刷業を除く全産業)、人口の推移などについて、都道府県間での相関を見たものである。(※:Gross Prefecture Product・県内総生産・名目)


 総人口の増減とGPP、全事業所の推移は比較的強い相関が認められる。人の集まる都道府県に仕事が多く発生し、経済が活発化する。当然、GPPと全事業所数の相関も認められる。

 一方の印刷産業の事業所数や出荷額については、GPPや全事業所数との相関はどれも弱い。印刷総出荷額(全国の数値)はGDPとの乖離を強め、マイナス成長を継続していることや、印刷事業所の閉鎖が進んでいる現状から、そのような結果になっているのだろう。

 比較した中では、GPPと印刷出荷額との相関がかろうじて見られた。弱い相関なので、仮に景気が少しばかり上昇したとしても、印刷出荷額はそれほど伸びないと考えていた方が良さそうだ。


―― 総合ランクで東京は32位、その理由 ――

 次のグラフは、都道府県別に印刷出荷額の大きさ(シェア)やその伸び率、事業所数の推移など13の項目についてランキング化し、それらのランクの平均を総合ランクとして並べたものである。

  都道府県別ランキング(グラフ)

 まず目につくのは、規模で最大の東京が、ランクで32位にあることだろう。
 注意したいのは、印刷出荷額のCAGR(黄色の点線)と事業所数のCAGR(青の実線)である。どちらも他の府県に比べ、東京は低い位置にある。印刷出荷額も印刷の事業所数も、ともに減少が大きかった。しかし、東京は全事業所数(印刷業以外)やGPPが極端に低いわけではなく、総人口もプラス(後述の表中)である。それにもかかわらず、なぜ東京は印刷出荷額の減少率が大きいのか。

 その答えは、全事業所(印刷業以外)と印刷事業所の数を比較すればわかる。他の産業の事業所の数に比べ、東京の印刷事業所の数が多過ぎるのである。
 表中にあるとおり「全事業所÷印刷業事業所」の数は、109.1と東京がもっとも低く、最下位の位置にある。

全事業所数と印刷事業所数

県別ランキング表(印刷用)  県別ランキング表(数値)


 もちろん、東京は大手の顧客の本社対応のためで、実際の印刷は他の県で行い、東京に拠点があっても都外まで営業開拓をしているケースもあるだろう。とはいえ東京の地場の印刷会社も相当数あり、地方の印刷会社の東京進出も合わされば、競争の激化は必定と言える。ランキングで上位にある神奈川県などの近県へ、活動範囲を広げるなどが一つの改善策かもしれない。


―― 地域の壁を超えるには ――

 地域の壁を超えるという点では、印刷通販の活用も一考だろう。サイトはすでにかなりの数に昇り競争も激しくなっているが、不特定多数のサイト来訪者のみを顧客にするのではなく、拠点から遠方にある取引先の発注の窓口として活用する方法もある。人が営業してネット通販に繋げるなどのコンビネーションだ。

また、ある印刷分野や、ある業務や業種の特定の専門サービスで実績をつけ、それを全国展開する方法もある。例として外食産業や写真業向けなどのサービスについては、すでに実績のある会社がいくつかある。

 改めて現在活動中の自社のエリアについて、活動の漏れがないかのチェックも大切だ。その地域の業態の変容に合わせた商品やサービスを、適切に提供できているかどうかの再確認である。

 印刷業は全国的に厳しい状況にあり、苦しい地域はあっても、その逆はない。だが今後、業務量の減少とともに各社の営業エリアの拡大や見直しは、必然的に起きてくる。その意味では、他地域に進出しつつも地場のマーケットを守る意味で、自社エリアの深耕も欠かせないと言えるだろう。


※本レポートは、弊社マーケティングレポート制作上の仮説構築のためのデータ分析や入手情報、途中経過を
   報告しているものです。

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