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新槇町ビル別館第一2階
2014年 9月16日
全産業の売上・利益の推移と印刷産業/大きな伸長が見込めない日本の産業
―― どの産業も厳しい ――
印刷産業の出荷額の減少が続くが、では他の産業の売上高の推移はどうなのだろうか。
下のグラフは全産業の売上をまとめたものである。黄色の点線で示されているのが印刷産業で、全産業が横ばい傾向にある中、印刷産業の下降率はやはり少し大きい。しかし、印刷産業のクライアントである他の産業が売上の伸び悩みにあるわけなので、そこからの発注額が絞られるのは仕方のないことかもしれない。加えて、電子化の進展も考え合わせれば、当面、減少トレンドの常態化は避けられないと見た方がいいだろう。
多くの企業が、売上を伸ばしたいと考えているはずだ。外部的には顧客とのコミュニケーションや新規の開拓、内部的には経営資源の有効活用や情報の共有、新規事業の立案などが、その課題として山積されている。この問題解決の支援こそが、顧客企業のニーズへの対応なのである。
―― 利益重視の経営 ――
下のグラフは、全産業の売上高営業利益率の推移である。
売上増が見込めないために、企業の多くは利益確保を重視している。「少ない予算で最大の効果」という、投資や経費の使い方になっているわけだ。そのため、事業所向けのビジネスをする会社は、厳しい値下げ要求や企画のコンペティションを強いられることになる。
とはいえ、所得の伸び悩みで出費の厳しい消費者向けの製品やサービスよりも、まだビジネスチャンスがあるかもしれない。プラットフォームビジネスが全盛となったB
to C(対消費者)ビジネスを諦め、B to B(対企業)ビジネスに的を絞る大手IT会社などが、その一例だろう。企業は常に進化しなければならないので、そこにはソリューションが欠かせないからだ。
以下は、近年の法人対象のビジネス全般の傾向の中から読み取れる動きである。これは、印刷ビジネスに限ったことではない。
「忠誠」「高品質」「安心」「信頼」などは当たり前で、その上でさらに結果を出さなければならないのだ。その結果とは、顧客企業の「売上の拡大、顧客満足度の向上や経費の削減、経営のスピード化、ブランド確立」など、様々である。
―― 印刷で何ができるか、その上で何をするか ――
例えば、印刷通販の台頭でテンプレートを使って作成される名刺は、価格が大きく下がった。これはこれで、一つの流れになるだろう。しかし、名刺は会社や社員の顔である。そして確実に相手に渡せる販促物の一つでもある。
飛び込み営業用の名刺と、見込み顧客向けの名刺を作り分ける提案などを、印刷会社はどこまで行っているだろうか。前者は紙を薄くし大量に持てるようにし、後者は高級な用紙で顔写真入りなどが検討できる。
また、名刺の管理には多くのビジネスマンが苦労している。名刺ファイルに入れてしまうと、並び替えやグループ分けなどをやり直す気になれない。部署異動があれば、集めた名刺の情報は古くなり、渡した名刺についても、先方から連絡が来なくなったりする。
名刺管理のソフトウェアは以前から販売されており、近年はクラウドコンピューティングによるサービスやスマートフォン向けのアプリケーションソフトも現れている。そして、紙の名刺そのものを代替するスマートフォンなどを使った電子名刺も登場した。電子名刺ならば、交換そのものがデータで行われるので、部署が変わっても情報の更新ができ、その上、各種の通知などにも利用できる。
これらのサービスの普及率はまだ高くはないが、小さな名刺一つとっても、その管理方法やコミュニケーション手段への応用など、“より使いやすく・価値ある形態へ”と変革がなされているのである。
紙の名刺は今後も使われ続けるだろう。しかし、単価が安い仕事のため、印刷会社も外注に任せたり、注文されたままに制作したりしているケースが多いのではないだろうか。
―― 「独自技術・商品」⇒「既存技術・サービスの組み合わせ」 ――
世界のIT界をリードするグローバルカンパニーは、独自の技術にこだわらず、むしろ既存の技術を自社のビジネスに活用して成功したと言われている。
効果的なデザインや材質の提案だけではなく、前述のITサービスなどと連携したソリューションの提供も一考である。
名刺とITシステム、さらに何かのキャンペーンと連携するなど、アイデアを盛り込むことが重要なのではないだろうか。電子カタログで言えば電子化の支援のみではなく、電子カタログを使った売れる仕組みであり、封筒印刷ならば、ロゴやマークなどブランディングの見直しを提案することなどである。
経費の削減という提案は受け入れられやすいが、売上が伸びる企画を、顧客企業は切望しているはずだ。高精細な印刷でも、「その効果」が見えなければ発注はされないのである。
ダイレクトメールのサービスに限らず、「売れる仕組み作り」までを含めた印刷業務の提案は、これからはさらに求められるようになるのではないだろうか。
※本レポートは、弊社マーケティングレポート制作上の仮説構築のためのデータ分析や情報入手、途中経過を
報告しているものです。
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