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見出しBUSINESS & MARKET REPORTS

2014年 9月10日

上場印刷会社の業績動向

過去4〜5年間の売上高・利益高の推移/プラス成長企業は利益も安定

―― 印刷産業出荷額をわずかに上回る売上推移 ――

上場している印刷会社について、いくつかのグループにまとめて業績を分析した結果を以下に示す。

 集計した会社は32社で、写真サービスやパッケージ製造を事業とする会社も含まれている。連結決算の会社は連結の業績を、それ以外の会社は単独の決算内容について集計した。なお、連結に含まれる会社もグループごとの分析が主であるため、個別に集計対象としており、一部の企業では海外売上高も含まれた数値となっている。
 暦年で業績推移を見ており、その年に決算期を迎えた会社がその年の集計対象となる。したがって2014年の最新決算前の会社は2014年には含まれていない。


 2009年から2013年と2014年までの売上高の伸びを比較し、「プラス成長」した会社を別グループとして取り上げているが、この期間でのプラス成長であり、それ以前の売上高がこれ以上に高く、2008年以降の数値と比較するとプラスではない場合もある。決算データを遡る関係上、入手できる数値が限られており、このような期間設定となっている。

 以下の表とグラフは、2009年から2013年までの印刷産業と今回の集計対象企業との業績推移を比較している。「大手2社(業界売上規模トップ2社)」
「売上プラス成長企業(CAGR<年平均成長率>で売上がプラス成長)」およびその他の「主要上場企業」の三つのグループで売上高の推移を見ている。


        《2009年〜2013年の年平均成長率の比較》



 どのグループも、印刷産業出荷額の推移を上回る業績の推移を示しているが、グラフからもわかるとおり、「大手2社」を含め、多くの会社がマイナス推移になっており、その下降度合いが産業全体よりは大きくはないレベルである。

 次の表とグラフは、2014年までの決算期が公表されている会社について、2009年からの売上高の推移を表している。2014年も依然として厳しい決算が続いているが、若干回復したようだ。



         《2009年〜2014年の年平均成長率の比較》



―― グループ力を高める方向性 ――

 下のグラフは連結決算の会社について、親会社以外のグループ会社の売上比率の推移をまとめたものである。平均的な数値を得るため、方針転換でグループ化を急速に進めた会社と、グループの売上比率が90%以上ある会社を除いて集計した。
 「大手2社」と残りの20社をCAGR(年平均成長率)でランキングし、上位から五つのグループに分けて比較したのが、以下のグラフである。




 全体的にグループ会社の売上比率が高まっている。ただそれが、売上の成長率とは必ずしも結びついてはいないようだ。グループ会社の売上高が高いということは、グループ全体の売上高への貢献度が高く、グループ企業各社の営業活動等が独立して進んでいることを物語っている。しかし、連結売上高を押し上げるほどの効果は出ていないことになる。

 今後の印刷業は、例えば、本業の印刷でも専門領域を持つことが一つの差別化となる。さらに、印刷周辺のデジタル化業務や顧客企業の事業を支援するようなBPOなどを手掛けるとなると、本業とは異質の会社を持つことになる。状況からすれば、ゆるやかにグループ会社の売上比率が高まっていくことが予想できる。それらのグループ会社が個々の専門会社として機能し、独自に活動できることが、全社のグループ力を高めることになるのではないだろうか。

親会社は、それらの専門会社を尊重し、ビジネス上の権限をどこまで委譲できるか、労働条件や社風などをどの程度まで許せるかなども、グループ運営の成否を分けることになるだろう。


―― プラス成長印刷会社は営業利益も安定 ――

 下のグラフは、本業の業績を示す営業利益率の推移について、三つのグループに分けてまとめたものである。


 「大手2社」と「主要上場企業(大手2社と売上プラス成長企業を除く)」は、落ち込みの傾向を一度示したものの、2013年には回復の兆しがうかがえる。一方「売上プラス成長企業」の利益率は、高い位置で安定した推移を示している。

 売上(業務量)確保のために価格を下げるなどが営業手段として起こりうるが、売上プラス成長の印刷会社は、そのような営業手段はむしろとっていないのかもしれない。仮説としては、以下が成り立つが、どれか一つがその要因ではなく、多面的な活動が重要と言えよう。

 1.利益率の高いクライアントや印刷業務を取得している/
   直接取引率が高い。

 2.価格競争に巻き込まれないほどの差別化がなされており、優位性
   がある。

 3.原材料の価格上昇や印刷コストなどについて、クライアントに説明し、
   理解を求めている。

 4.合理化(機械化、自動化、IT化、仕入れ先等の見直しや交渉)が
   徹底的に行われている。

 5.既存業務以外の新規/成長市場の売上比率を高めている。



―― 臨時従業員の状況 ――

 従業員に占める臨時従業員等の人数の比率を表したものが、以下のグラフである。
 ここでいう臨時従業員とは、各社の有価証券報告書の従業員の状況についての報告で、従業員数とともに外書してある人員数のことである。

 次のグラフは、大手1社についてまとめた結果である(臨時従業員数の判明した企業のみで集計)。従業員数は微増であるが、臨時従業員の比率はやや下降気味である。



 次のグラフは2009年から2013年の平均成長率がプラスであった会社(8社)の、従業員と臨時従業員の推移である。


 「売上プラス成長企業」については、従業員は増えているが臨時従業員の上昇はむしろ小さい。

 一方、その他の「主要上場企業」(16社)に関しては、臨時従業員の構成比はほぼ横ばいの位置にある。(以下のグラフ)。



 臨時従業員の構成比に関しては、これからも売上の増減に合わせて変動するだろう。自動化やオペレーションの簡易化、スキルレスなどもそれを左右する要因となるので、一概にその比率の高低の適否は論じられない。
 


―― 従業員一人当たり売上高推移 ――

 前述の従業員と臨時従業員の構成比のグラフでも示したとおり、従業員数(臨時従業員を除く)の推移は2009年から2013年のCAGRで、「大手2社」が+0.9%で微増(臨時従業員は−0.3%)、「売上プラス成長企業」の従業員数は、年平均+3.9%(臨時従業員は+3.2%)という高い伸び率となっている。それ以外の「主要上場企業」の従業員推移については、CAGRで−2.9%(臨時従業員は−3.5%)で推移した。

 以下のグラフは、従業員(臨時除く)一人当たりの売上高(総売上高÷従業員数)の推移を示している。従業員一人当たりの売上高は、その会社の営業や生産の効率性の指標となる数値である。



 大規模な仕事を効率的に生産しているという点で、「大手2社」の一人当たりの売上高が大きい。それ以外は、「売上プラス成長企業」とその他の「主要上場企業」について差は認められない。

 次のグラフは、臨時従業員までを含めた従業者数で一人当たり売上高を算出した結果である。臨時従業員数を公表している会社のみの集計となっている。

 「大手1社」(過去の連続した公表値が1社のみであったため)は、規模の大きな仕事を効率的に処理している点からも、臨時従業員も含めた一人当たりの売上高でも最も高い位置にある。「売上プラス成長企業」とそれ以外の「主要上場企業」の数値を比べると、プラス成長企業の方が高い位置にある。

 「売上プラス成長企業」の方が、営業・生産効率がやはり高いと言えそうだ。その背景にはやはり、前述した「利益確保の施策(1.〜5.)」が一つあると考えられる。もちろん、印刷業の業種(総合印刷業かビジネスフォームや包装印刷が中心の専門印刷業か)により、このような差が強く現れることは否定できない。しかしその違いを認識し、自社のビジネスにいかに応用して取り入れていくかが、重要なのではないだろうか。



―― 今後も印刷が売上と利益の主体 ――

 印刷会社のソリューションプロバイダーへの転身が叫ばれている。だが、そのソリューション系業務の売上比率は、今回の集計対象の以外の印刷会社を含めても、どの企業でもまだ低いようで、当面は印刷業務が売上と利益の柱である。今回の「売上プラス成長企業」でも、本業の印刷業務が成長の源になっている。

 とはいえ、印刷市場(出荷額)の縮小が今後も進むことは、ほぼ定説になりつつあり、それを補填する業務(ビジネス)を開拓しなければならない。その際は「本業である印刷業務の拡大や受注の安定につながるような新規の事業」であることが望ましい。

 本業の印刷業務の技術力を高め、品質、納期、価格で優位に立つことはもちろん重要だが、今後、印刷物の全体的な需要量が減少していくとなると、どうしても新規の取引先の開拓が避けて通れなくなる。その時の切り口になるような印刷以外のビジネスが、新規事業の一つの存在形態として考えられるだろう。


※本レポートは、弊社マーケティングレポート制作上の仮説構築のためのデータ分析や情報入手、途中経過を
   報告しているものです。


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