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新槇町ビル別館第一2階
2015年3月9日
スマートフォンの普及/情報機器の利用時間拡大とテレビ視聴
―― 広い世代に受け入れられているテレビ放送 ――
下のグラフはテレビの1日の視聴時間の週平均である。グラフの動きから、平均的な視聴時間は、ほぼ横ばいから微減の推移にあると見ることができる。少なくとも、極端に視聴時間が減少していることはない。
次のグラフは、年代別等でテレビとインターネットの価値観について聞いた結果である。回答結果をわかりやすくするために点数化した(配点「非常に重要」2点「ある程度重要」1点「どちらともいえない」0点「あまり重要ではない」-1点「まったく重要ではない」-2点)※以下、総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」を再集計等をして引用。
10代、20代、30代など若い世代は「情報を得るため」「楽しみを得るため」について、テレビとインターネットの双方で点数が高い。一方、50代以上の年代から、インターネットについては点数が下がる傾向がある。後述するインターネットの利用率が、この年代以上でさほど高くないことから、非利用者の評点が下がっているからだろう。
情報を得るための手段としての重要度
楽しみを得るための手段としての重要度
次のグラフは、メディアの信頼度について集計した結果である(配点「全部信頼できる」2点「大部分信頼できる」1点「半々くらい」0点「一部しか信頼できない」-1点「まったく信頼できない」-2点)。
メディアの信頼度
ニュースサイトから個人のブログに至るまで、すべてが信頼できるわけではない。その点が、インターネットの信頼度の評価に表れている。
テレビの価値としては「情報入手」「楽しみ」「信頼性」の三つで、どの年代でも重要性が高い結果となっており、評価の上ではバランスのとれたメディアであると言える。
―― テレビの視聴時間に年代差 ――
次のグラフは、二つの期間(H24年調査2012年9月20日<木>〜10月11日<木>、H25年調査2013年11月30日<土>〜12月8日<日>)ついて、日記形式でテレビ等情報機器の利用率と平均利用時間について調べた結果である。一年間の平均値ではないので、外出率に関係する季節要因やメディア接触率を左右するイベントの有無などで、数値が変動する可能性があることは注意が必要である。
平成25年調査は平日と休日に分けて記録されているが、平成24年との差を見るために、双方の平日のみの結果を比較している。
集計のn数は以下のとおりである。なお、利用者の平均利用時間の算出は、例えば、タブレットPCなどは利用者数が少ないため、回答のばらつきなどが大きくなる点は注意が必要である。
Source: 総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
調査期間中にテレビ受像機を利用した人の率は以下のとおりであり、テレビ放送のリアルタイム視聴のみならず、録画視聴やCD/DVDの視聴、ごくわずかだがテレビゲームの利用も含まれている。
グラフからもわかるとおり、利用者の多くはテレビ放送のリアルタイム視聴であり、録画視聴等(点線グラフ)は、さほど多くない。また、全体として若い世代の方が、テレビの利用率はやや低い傾向がある。
下のグラフは、テレビ受像機によるテレビ放送のリアルタイム視聴と録画視聴を合わせた平均の視聴時間である(パソコンや携帯・スマートフォンでのテレビ視聴状況は後述)。
利用者の率では年代での差はさほど大きくはなかったが、視聴時間になると、若い世代での短さが顕著になる。
テレビの重要性に関する回答結果から、若い世代でもテレビは重要なものと意識されており、それでもテレビ視聴時間が短いのは、放送内容が価値観に合わないわけではなく、後述するインターネット関連の行為に時間を奪われているからであると推定できる。
―― 情報機器の普及率と利用率 ――
下のグラフは、パソコン等の情報機器の一般世帯への普及率の推移である。スマートフォンが急速に伸び、パソコンは、スマートフォンやタブレットパソコンなどに一部用途等が代替されていると考えられる。メール交換や、インターネットの閲覧ならば、スマートフォンやタブレットパソコンでも充分に代用できるからである。
次のグラフは、情報機器の利用率について表している。なお、利用率なので所有率とは異なる。パソコン所有者でも、調査期間中にスマートフォンしか使わなかった協力者もいるだろう。
スマートフォンの利用率が若い世代で高く表れている。パソコンは40代が中心で、タブレットに関しては、10代がやや多いのが特徴であり、パソコンと同様に40代を中心に、50代や60代でも利用されている。
パソコンの利用率と利用者の平均利用時間を性・年代別に表したのが、次のグラフである。
パソコンについては、50代でも利用率、利用時間ともに40代や30代と大きな差はない。60代でも利用時間は極端に落ちず、利用者はパソコンを使いこなし、うまく生活に取り入ている様子がうかがわれる。
パソコンの平成24年から25年への変化としては、平均利用時間はやや増加したものの利用率が下降している。スマートフォンやタブレットなどへ、一部の利用が移行したと見ることもできる。
タブレットパソコンについては、10代の利用率と利用時間の長さが目立つ。24年と25年の比較では、利用率、利用時間ともに増えており、利用時間の長かった10代を除いたすべての年代で、利用時間の伸長が認められる。
―― スマートフォン、利用率・利用時間ともに若い世代 ――
スマートフォンに関しては、利用率、利用者の平均利用時間ともに、10代や20代が高い結果となった。中でも10代は、利用率では20代より低いが、平均利用時間は20代よりも長く、頻繁にスマートフォンを活用している様子がうかがえる。30代以降は利用率に差はあるものの、利用者の利用時間にさほど開きがない。
平成24年と25年の比較では、やはり25年の方が利用率、利用時間ともに増えており、60代を除けば、各年代で利用率が上昇している。
次のグラフはフィーチャーフォンについて、同じ結果をまとめたものである。各年代で利用率が低下し、60代でも減少している。利用者の平均利用時間は10代、20代がやはり多く、利用率は落ちても、利用者の利用時間に極端に大きな落ちはない。
―― パソコンと携帯・スマートフォン用途比較 ――
下のグラフは、調査期間中のパソコンと携帯・スマートフォンの利用内容を表している。パソコンや携帯・スマートフォンを利用した人を母数に集計した。
携帯・スマートフォンではメールとソーシャルメディアの利用、パソコンはブログやウェブサイトの閲覧、動画サイトの利用、文書や表の作成などの用途が多い。
次のグラフは、パソコンと携帯・スマートフォンの利用内容を性・年代別にまとめた結果である(※選択肢はそれぞれで若干異なる)。
40代、50代はパソコンでのメール利用とブログやウェブサイトの閲覧、文書の作成などが多く、ソーシャルメディアや動画の利用は、逆に10代や20代の方が多い。オンラインゲームでは30代が中心だが、全体的に利用率は高くない。
携帯・スマートフォンでは、若い人の通話用途が少ない。メールやソーシャルメディアが利用の中心で、ブログやWebサイトの閲覧は、20代や30代が多い。
パソコン利用内容上位(複数回答)
携帯・スマートフォン利用内容上位(複数回答)
次の二つのグラフは、同様に回答率下位の利用内容を表している。
パソコンも携帯・スマートフォンも、ワンセグ等でのテレビ放送の視聴率は少なく、どちらかと言えば、20代以上から利用率が徐々に高まる傾向である(注:50代で高い利用率になっているが、サンプル数の少なさからの影響の可能性が高い。なおタブレットパソコンでのテレビ視聴は、タブレット利用者の中の1.4%<平日>である)。
電子書籍(ダウンロード済み書籍・雑誌・コミックの閲読)の利用者も、それぞれの利用者の1%前後である(タブレットパソコンのユーザーでは2.0%)。パソコン等を使わない人も含めた全体では、利用者の率は1%を下回ることになる。
パソコン利用内容 下位
携帯・スマートフォン利用内容 下位
―― 男女別、携帯・スマートフォンの利用 ――
次のグラフは、携帯・スマートフォンの利用内容について、男女別に集計した結果である。
自分のパソコンを持っていない主婦や若い女性もいるだろう。その分、スマートフォン(携帯含む)で、メールからSNSの画面更新、インターネット通販の利用まで用途は様々であると想定できる。
女性のメールやソーシャルメディアなどのコミュニケーションへの活用は、男性よりもやや高い結果となっている。
スマートフォンの登場までは一般世帯でのインターネットの利用は、男性の方がやや多かった。今後スマートフォンの普及とともに女性のインターネットへの参加が、これまで以上に増えることになる。女性に配慮したサイトの表現やデザイン、サービス、そしてマーケティングの仕組みなどが求められるケースも出てくるだろう。メディアやコミュニケーションを好む女性の嗜好から、最初に女性をサイトへ招き入れ、その後に夫や子供につなげていくような販促の施策もありうる。
―― 利用者の総時間での比較 ――
利用率と人口から利用者の総数を概算し、利用者の平均時間を掛けた結果を「総時間」として比較したのが以下のグラフである(H24/H25 人口×利用率×利用者平均時間=利用の総時間)。各年代や前年との規模の推移を比較するために算出した。
下のグラフは主要な機器の利用総時間を、平成24年と平成25年で比較している。総時間で大きいのがやはりテレビ視聴である。前年比では-7.9%となるが、今後の方向性については、経年で見ないと判断は難しい。
スマートフォンやタブレットパソコンなど、普及率が上昇中の機器については、利用者の増加などから総時間が増えているのは間違いない。一方、従来のパソコンやフィーチャーフォンは、スマートフォンやタブレットパソコンに代替され、減少している傾向が読み取れる。
年代別では、テレビ、パソコンはどの年代でも伸び悩みの状況だが、スマートフォンは年代では50代、性別では女性の総時間の伸び率が高い。また、普及途上のタブレットPCの総時間の増加率も高い。
テレビ視聴について年代別に表したのが以下のグラフである。10代と60代では3倍以上の総時間の開きがある。平成24年との比較では、10代や20代で総時間が伸長した結果になっているが、これも季節や番組内容などで変動する可能性があり、経年で追跡する必要がある。
次のグラフは情報機器について年代別の総時間を表している。10代、20代ではスマートフォンの利用総時間が大きく、40代以降ではパソコンが逆転している。
以下はテレビと情報機器(パソコンとスマートフォンの合算)についての総時間の推移を、年代別に折れ線グラフにして表している。
テレビの総時間は40代、50代で減少し、一方、この年代でのスマートフォンの活用が増えたため、パソコンとスマートフォンの総時間が増加している。女性についてもスマートフォンの普及で情報機器の利用総時間が増え、その反面、テレビは男性以上に総時間を減らしている。「ながら視聴(テレビを観ながらスマートフォンを操作する)」もあるとはいえ、新しい機器やサービスが、既存のメディア(テレビや新聞、出版物等)の利用時間や用途を、一部奪っているのは間違いないだろう。
―― 既存メディアの今後 ――
情報機器とインターネットはさらに年齢の高い層へ拡大する。スマートフォンやタブレットパソコンもまだ普及の余地があり、これらのデバイスを介した新しいサービスが、今後も誕生してくるだろう。既存のメディアの価値が変わらなくても、あるいはメディアとしての価値を高めたとしても、人間の1日の活動時間の限界や、新しいものに惹かれる心理などは変えようがない。
既存メディアは、現行のコンテンツや利用者を資産として、新しいメディアやサービスとの連係をうまく図ることで、次のビジネスモデルを確立する時期にきている。
大きな流れをまとめると以下のようになる。
@若い世代を中心に、利用するメディアが多様化しているため、また、SNS等でのコミュニケーションにも時間を割かれるため、それぞれが細切れな利用時間になっている。
Aスマートフォンの普及等で、メディアへの接触は自由に、どこでもできるようになった。
B情報は与えられる時代から、選ぶ時代になった。
例えば、これらのニーズを満たせるのが、一つにはVOD(ビデオ・オンデマンド)などのシステムだろう。機器、場所、時を選ばず、自分の好きなコンテンツが楽しめる(上記、A、Bとマッチ)。
そしてもう一つが、上記Bとは相反するが、自分の知らない情報やコンテンツに接触したいという欲求であり、別の誰かから知らされたいというニーズである。ネットを利用した口コミ効果が注目されているのにも、そんな背景がある。
そこで求められるのは、一つにはキュレーション機能だろう。これはITの技術上のキュレーションだけではなく、既存メディア(テレビや新聞や雑誌等)の担い手が持つ、キュレーターとしての能力と役割である。時間が忙しい人ほどテレビやラジオの「ながら視聴」や、新聞や雑誌の斜め読みが貴重な情報源になることを知っている。
商品でも多種多様化すると、買い手は選べなくなり、購入の見送りが起こる。情報も同じではないだろうか。
レコメンド機能があっても、情報を検索する能力は、その人の知識やキーワードの範囲で限定されてしまう。ネット上はどこにでも行けるが、意外とアクセス範囲は限られてしまっていることもある。
インターネット全盛の時代だが、これまでのテレビや新聞や雑誌のような、作り手によって選ばれた良質で、そのメディアの個性や世界観が反映された情報が、やはりこれからも求めらるのではないだろうか。既存メディアの強みと言えるかもしれない。
しかし、新しいメディアやサービスは、これからも登場し、利用者の利用時間はさらに細分化されていくこともありうる。短い時間で広く知りたい、だが、本当に知りたいことは深く知りたい、など「横(種類)」「縦(深さ))」「大きさ(取得時間/ボリューム)」の要求に対応できる必要がある(上記@)。
これが既存メディア(テレビや新聞や雑誌等)の弱みであり、逆にインターネットなどの新しいメディアの強みとなっている。
VODによるテレビ番組の視聴でも、リアル視聴と同じ長さを観たいという要求の一方で、ダイジェスト版を観たいというニーズもあるだろう。リアルタイムのテレビ放送で知った情報をさらに深く知りたいという要求もある。現状は、テレビで知ってインターネットで調べる、という流れを視聴者は自主的に行っているが、これらを体系立てて提供する方法もあるだろう。
既存メディアのコンテンツをインターネットなどでも利用できるだけではなく、求める人の情報要求の深さや、利用場面に合わせた提供時間の長短、その人にとっての利便性の高いメディアや機器での提供が、優秀なキュレーター機関を通してできれば、一つの強みになるのではないだろうか。
本レポートは、弊社マーケティングレポート制作上の仮説構築のためのデータ分析や情報入手、途中経過を報告しているものです。
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