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見出しBUSINESS & MARKET REPORTS

2014年12月11日

各界で高まるコンサルティングニーズ

コンサルティングをメインサービスにする会社が増加/内と外に求められるコンサルティング能力

―― 印刷業におけるコンサルティングの利用 ――

飛沢:印刷業界専門にコンサルティングサービスを提供していらっしゃる、株式会社GIMS代表取締役の阿部 隆様、本日はよろしくお願いします。はじめに、御社のサービスをご紹介いただけますか?

阿部:平成12年から印刷・製本、関連企業の経営のコンサルティングをしています。一口で印刷業界と言っても商業印刷や出版印刷を手掛ける総合印刷業から、ラベル印刷やビジネスフォーム印刷、パッケージ印刷を専門とした会社など様々です。同じ種類の印刷物でも、機械設備の特性で売り先が異なることもあります。弊社ではコンサルタント8人体制で、担当印刷分野の分担から、経営診断、人事労務などのコンサルティング業務の分担など、それぞれが専門領域をもって対応しています。

特徴は主に以下の3つです。
●印刷業界に専門特化:業界に関するコンサルティングの豊富な実績。

●公的支援施策に強い:中小企業診断士・社会保険労務士等のアドバイス。

●計画策定・実行支援の経験が豊富:PDCAサイクルの起点となる計画策定とフォロー。

飛沢:平成25年に、経済産業省から「経営革新等支援機関」に指定されていますね。直近では日本印刷技術協会(JAGAT)の『第31期「印刷後継者・経営幹部ゼミナール」』の中で事業計画作成に関連した講座をご担当されています。

阿部:自社の5年後、10年後を見据える上で、事業計画は重要です。銀行へ提出する事業計画書には独特な書き方というのがありまして、そこを誤ると資金が調達できないなどの支障を来します。実務的な面での支援の一つですね。それと弊社の特徴として、公的支援施策対策というのがあります。

飛沢:公的資金を有効に活用するための支援ですか?

阿部:印刷会社様はこれまで工場や社屋、その土地などご自分の資産でやってきた会社が多いんです。公的支援というものをあまり意識したことがなかった。コンサルティングの一例ではありますが、第三者の目を通すというのは、そういう利点もあります。公的支援は融資だけでなく、「ものづくり補助金」等の「補助金・助成金」を受けること、専門分野についてアドバイスを受けるための「専門家派遣」、産業展・見本市等への出店の支援等様々なものがあります。

飛沢:これは帝国データバンクの分析資料なのですが、「5 年間で経営コンサルタントを営む企業数は約1.9 倍、経営コンサルタント利用企業数は約3.7 倍に増加」とあります。コンサルタント専門の会社のみならず、コンサルティングを主業務にする企業も含まれた数ではありますが、時世からすれば当然の流れかもしれません。どう思われますか?

コンサルティングサービスを提供する企業数推移

コンサルティングサービスの利用企業数推移


阿部:印刷業界も、ここ数年でかなり変化が見られます。景気頼みではなく、根本的に自社の事業領域や戦略、社内の体制などを見直そうという動きですね。

飛沢:コンサルティングをはじめて利用する機会も増えているのですか?

阿部:これまでも公的なセミナーや勉強会などをきっかけに、コンサルティングを受けるケースはありました。ただ、「ソリューションビジネスの時代です」という指導をしたとしても、「では自分たちはどういうソリューションを提供すればいいのか?」というところで話が進まなくなってしまうんです。実践的ではなかったんですね。

飛沢:ソリューションといっても、印刷業以外の会社たちと競わなければならないので、それはそれで大変ですよね。でも、営業のやり方一つ変えるだけでも、まだ印刷のクライアントから新しい仕事は引き出せそうな気がするのですが、いかが思われますか?

阿部:印刷物の仕上がりを最高度に再現するという意味では、顧客の要望をくみ取り、それを印刷工程に確実に伝えるという役割を、印刷会社の営業は果たしてきました。しかし納期対応や価格交渉が激しさを増し、本来重要な「顧客の業務内容の把握と分析、課題の抽出」というところまでは、手がまわらないんですね。でも、そこが印刷営業のこれから一番大切なところなんです。ソリューションスキルやコンサルティング能力と言えばいいのでしょうか。



――求められる印刷会社からのコンサルティング ――

飛沢:そのような営業マンのソリューション/コンサルティング教育を、印刷業界向けに提供している会社は、あまり見かけない気がしますが……自社で定期的に行うのも大変ですよね。

阿部
:営業マンを教育すれば良い結果が出るとは限らないかもしれません。まずは自社の事業ドメインを明確にすることが大切なんです。そこから営業の方針も決まる。どの領域でどのような顧客にどのようなサービスを提供するかの計画立案から、業務の見直しや再構築を経て、成果が出るところまでナビゲーションするというのが、これからのコンサルタントの仕事だと考えています。

飛沢:ソリューション系の商材を強化するにしても、資金や人材が必要ですよね。そういったリソースを捻出するためにも、制作・製造工程や営業活動などの数値管理を徹底して利幅を少しでも上げるなど、メインの印刷ビジネスの再強化を図る必要がまずあるんじゃないでしょうか。営業評価の仕組みも、他の業界の新規/リプレース営業の評価軸を参考にするなどの方法もあります。そのあたりはいかがでしょうか?

阿部:印刷物の原価把握はロッドの大きな業務は可能なのですが、修正なども含め、こまごました仕事が多いのが印刷業の特徴で、原価把握が難しいんです。営業評価も、まだ数値化している会社は少なく、導入してもすぐに完成度の高いものができるわけではないので、営業マンから不満が出たなんて話も聞かれます。でも、それらを進めていかないとならない。

飛沢:製造業や流通業、宿泊業などの印刷業のクライアントについて経営課題を調べてみました。主に中小規模の企業での話なのですが、共通事項として、やはり一番は業績向上ですね。そのためには、地域の一番店になるなどの差別化が必要で、効果的な販促や広報・支持者獲得などのコミュニケーションの強化やニーズ/ウォンツのサービスへの反映などが挙げられます。社内的には人材の確保とその教育や満足度の向上などですね。人手不足の業種は深刻ですから。
 これらをすべて自分たちで実施するのは難しいでしょう。そこでやはり状況を整理・分析するコンサルティングと、できない部分を補うBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が求められているのだと思えます。ITメディアを併用するにしても、販促、広報、教育マニュアルなど、印刷物と親和性のある内容ですよね。「地域の身近なコンサルタント」などという呼び名が、印刷会社の今後に当てはまるのではないかと、改めて考えてしまいました。

阿部:東京や大阪などの大都市圏以外の地域の印刷会社は、企画から印刷、後処理から納品までの一貫体制が以前からできています。POD機の導入も早かった。IT系のサービスでも競合が少ない分、都心部よりは有利かもしれません。業務の規模が都心部よりは小さいでしょうが、一歩踏み込んだサービスのチャンスがあるでしょう。

飛沢:例えば、効果的な「社内報」の提案で、従業員の満足度が向上し離職率が低くなったらすばらしいことですよね。問題は“効果的な”というところで、これはクライアント(印刷の発注者)に聞いても答えは出ません。印刷会社の営業担当者や企画担当者が、考えなければならない。そのためには“相手を相手以上に知る”ことであり、業界研究や地域特性の分析、必要に応じてクライアントの従業員のアンケート調査もやらなければならないかもしれない。そこまでできると強い会社です。デザイン力だけではなく、分析やライティング能力なども求められるでしょうね。

阿部:全般的に印刷以外の前工程や後工程の自社内への取り込み(内製化)が進んでいます。一つには、その分の売上確保、それともう一つが、クライアントの納期短縮や修正要望への迅速な対応です。内製化が必ずしも正解かどうかは難しいところですが、短納期が差別化の一つになっているのは間違いなさそうです。その上で、ソリューション営業が求められる時代なのでしょうね。そうなると川上の業務ができる人材の確保が課題になり、M&Aなどが進む動きもあります。

飛沢:ソリューションに熱心な会社が、売上を拡大させているかというと、そうとも言えないところが難しいところですよね。やはり競合が多く、単価の下落が早い。とくにインターネット系はWebマーケティング・ビジネスへの参入や事業強化が激しくなっているので、ソリューションをしつつも、それを切り口にした印刷業務の売上確保が、やはり重要なのだと思えます。

阿部:仮に全社の売上は横ばい程度で推移したとしても、ソリューションをやっていなかったら下降していたかもしれない、そんな状況になりつつあるのかもしれませんね。IT系のツール/商材は一通りそろえられる環境にあると思います。課題はその効果的な使い方で、自社のメイン事業とどう連動させられるか。そのあたりの支援も、コンサルタントの役割だと考えています。

飛沢:本日は、貴重なお話をありがとうございました。


―― 取材を終えて ――

 改めて、変革の時を印刷業界は迎えていると感じた。
 コスト管理や営業体制の見直しなどは、すでに取り組み済みの会社もあるだろう。しかし、ビジネス環境の変化は早い。当初の計画どおりの結果が出ているのか、周囲の環境(競合や市場のニーズ等)との齟齬が生じていないかなどを、定期的にチェックする必要があるかもしれない。

 まずは自社の地域の環境分析、取引先の業界分析、そして自社の事業分析を進め、その手法を外部のクライアント向けに発信するなどの方法もある。
 社内向けにしても社外向けにしても、ソリューション/コンサルティング能力が、やはり鍵なのではないだろうか。

*本レポートの取材先のコサルティングファーム

 株式会社GIMS 
   埼玉県さいたま市中央区上落合 8-13-23-101
     URL: http://gims.co.jp/(リンク)
     代表取締役 阿部 隆

本レポートは、弊社マーケティングレポート制作上の仮説構築のためのデータ分析や情報入手、途中経過を報告しているものです。

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