〒103-0027 東京都中央区日本橋3丁目2番14号
新槇町ビル別館第一2階
2016年7月11日
食のトレンド分析と2021年までの予測
― 食に期待する価値の変化―
事務系の労働者の増加などを背景に、「食=エネルギー補給」という本来の役割のみならず、新しい価値が求められるようになると予測できる。一方で給与等の推移と支出の関係から、食支出に対する消費者の選別が行われる状況でもある。「価格」や「味」「栄養等」以外にも価値を見出せない商品は、その選別の対象からはずされてしまう危険がある。消費者の生活を助けるような「@経済的な支援」「A時間的な支援」「B娯楽的な支援」が食に求められると言える。
【総摂取カロリーの推移と職業率】
【平均給与の推移と総摂取カロリー】
―高齢化―
少子高齢化を迎え、食消費者の主役も変化している。次のグラフは総摂取カロリーの平均と年代別の人口から、その年代別の総摂取カロリーの構成比を算出したもの。総摂取カロリーを一つの食の市場規模と捉えれば、15歳以上の人口のうち60歳以上は男性で3割以上、女性で4割以上にもなる。製品のみならず、その包装方法や情報の伝え方、販売方法なども高齢化に適したものを、よりいっそう考えなければならなくなっている。
【カロリー(総摂取カロリー平均×各年代人口)の構成比推移】
※15歳以上を100%で弊社算出。
<男性>
<女性>
―食のソリューションテーマ―
高齢化がそのまま医療費や健康食品の支出の上昇を意味しないこともある。どちらも家計にとっては支出の増加であり、できるなら抑えたいと考えている。一方で元気なうちは「予防」に目が向くが、発症してしまえば「対症」にならざるを得ず、「予防」に回す支出が難しくなってくることもある。給与水準の低迷や年金不安などが背景として大きい。
【健康関連への支出推移】(点線右軸)
その点で、食に対する「健康維持・増進」への期待と役割は高まると見るべきである。
上グラフの歯科診療と歯ブラシ等の支出上昇は、どの年代の世帯でも見られる。菓子類、炭酸飲料、乳製品の支出上昇との関連性は特定しづらいが、「食のソリューション」テーマの一つとなるかもしれない。
下のグラフは、「調理食品」「飲料」の支出とポリ袋・ラップ類の支出を比較している。二つの支出とも上昇基調なので、ポリ袋・ラップ類との支出の関係性は深くはないかもしれない。しかし調理食品や飲料の家庭での消費が増えれば、排出される容器等のゴミ類は増えるのは間違いない。味も栄養分も価格も同じなら、より廃棄や再保存(開封後等の保存)が容易な食品へ消費が流れることはありえる。
さらに消費者が高齢化することで、その商品の「わかりやすさ」「使いやすさ」「捨てやすさ」「再保存のしやすさ」などで包装へのソリューションの必要性は、いっそう高まると見ていい。
【ポリ袋・ラップ類と調理食品の支出推移】
【ポリ袋・ラップ類と飲料の支出推移】
―食とコスト意識―
給与が増えれば単価の高い食べ物が求められ、給与が下がれば日々の家計を引き締める目的で、無駄な食費は抑制される。抑制対象の筆頭は「被服及び履物」である。安い衣料品の普及と、多少の着古し感を許容できるのなら、長く使い続けることも可能な財だからだ。
給与等と相関が低いのは抑制の難しい、光熱・水道費、家具・家事用品である。後者は、負の相関(片方が増えれば<減れば>、片方が減る<増える>)が現れているが、給与の推移と逆行するものではなく、例えば冷蔵庫などは寿命がきたら給与の多寡に関係なく買い替えなければならないからだ。給与が低迷すると支出が増える関係にあるわけではない。
食では魚介類、野菜・海藻、果物、酒類、外食が給与等との相関が高い結果となっている。中でも外食は、家計の支出の抑制として内食や中食で代替される率が高くなる。魚介類等は支出減少が続いており、給与の減少傾向と一致しているため高い相関となっている。近年の食の傾向から、給与が増えれば魚介類の支出が増えるとは限らない。魚介類の支出下降の背景には価格の上昇なども一要因だが、洋食化で肉類が求められ、手間のかかる料理を避ける意識などが背景として大きいのである。
肉類では牛肉が給与の変動の影響を受けやすく、20代や30代の世帯ではその傾向が強いと読み取れる。
【平均給与 消費支出との相関】
【給与と食料支出の相関】
【牛肉の支出と平均給与の推移】
【豚肉の支出と平均給与の推移】
―就業率の上昇と食の支出との関係―
若い世代から60代以上の年代まで、女性の就業率は上昇している。そこで買い物や調理の時間は以前に比べれば時間的な余裕がなくなってきている。調理食品や即席商品、味付き調味料などの支出が増える背景である。
同時に昼食を家庭以外で摂る人(外食)の率も増えることになる。サービス産業への移行でシフト勤務者が増えたことも一つの要因。調理食品の活用や調理の簡略化などが家庭において重要度を増すのは今後も変わらず、食の重要なソリューションのテーマである。
【女性の就業率と調理食品/肉類の支出推移】
―支出の時期とマーケティング機会―
食の支出は12月がもっと高い。給与と賞与の推移を見ると、賞与の回復傾向が認められ、12月は今後も、食のマーケティングにとって重要な月である。
【食料支出の月別推移 2014〜2016F】
【平均給与と賞与の推移】
一方で、食の支出の構成比でみると、12月は若干その比率を下げ気味にしている。それに替わって他の月が伸びてきている。この背景には12月に支出の多い魚介類や清酒などの支出の下降などもある。それ以外では、イベントの分散化などもある。クリスマスや年末年始の商戦のみならず、近年ではハロウィンなどが加わったことが代表的と言えるだろう。
【食料支出の月別構成比の推移】
次のグラフは同じものをスナック菓子で見ている。支出が増えているスナック菓子は、11月や12月に支出比率の上昇傾向が認められる。
下のグラフはコーヒー(レギュラー・インスタントコーヒー等)の支出の比率の推移を示している。12月というイベントが多い時期が中心だったのが、他の月に分散化している。支出の推移も堅調であり、常飲される飲み物として定着化してきていることがうかがえる。
【コーヒー支出の月別構成比の推移】
飲酒代(外食)の支出の推移は悪くない。ただし忘年会や新年会が集中する1月や12月に限られたものではなく、分散化してきている。一つには、若者などを中心にコミュニケーションの一環としての飲酒機会の増加や、一人や少人数でも立ち寄れる居酒屋やアルコールを提供する店が増えたこと、ファミリーレストラン等で軽く飲酒する人たちなどの存在などがその背景にある。
【飲酒代(外食)支出の月別の支出推移】
【酒類と飲酒代(外食)の支出推移】
飲料への支出は増える一方、酒類への支出は減少している。上のグラフは酒類支出と飲酒代(外食)の支出比率の推移等を示している。双方の合計では支出の下降傾向は収まっているが、ここ数年は飲酒代(外食)の支出がやや優勢である。
「酒=酔う」も時代とともに変化し、コミュニケーションや外のみのイベント的効果などへ、興味が移っていることがある。「家飲み」用の酒類にもそういう効果が求められるだろう。
―食消費支出の予測―
支出の増加は価格上昇によるところが大きく、積極的な消費とは言えない。それをどうアクティブなものに変えていけるかが、メーカーや販売会社の課題である。
【食料消費支出の推移と予測】
<支出の推移>
<消費支出全体に占める比率の推移>
【世帯主の年代別 世帯数予測値からの規模換算値と平均成長率】
―食育の重要性が高まっている―
洋食化の進行や就業率の上昇などからくる調理時間の削減要望などで、魚介類や和食向けの野菜の支出は低調である。支出金額だけでは価格の上昇などでわかりづらく、数量で見ると、例えば魚介類はその多くの品目が減少している。野菜も洋食に合ったものや、和洋を選ばないものの支出は悪くないが、和食用の野菜類は支出の減少が避けられない。世代が交代することで、その傾向はいっそう強まることが懸念される。
食の多様性を失うことで日本の食文化は奥行きのないものとなり、将来は人口減少に加え、新たな市場縮小の要因となりかねない。
特に若い年代における和食系食材(魚介類、野菜の中の和食用の食材、しょう油やみそなどの和食用調味料)の消費を促すような、和食文化の家庭における定着と発展を考える必要がある。洋食向けの野菜と和食向けの野菜を生産する農家の間に格差が生じると、和食野菜の供給不足や値上がりにつながり、和食文化衰退の悪循環を作りかねない。
【食料中分類別支出の推移】
【世帯主の年代別 食料中分類別の支出比率 2015年】
【食料中分類別 総支出(支出×総世帯数)推移と予測】
【世帯主の年代別 食料中分類別の総支出額(世帯数×支出額)2015年】
【主要野菜の消費数量 平均成長率】
【主要油脂・調味料の種類別支出の推移と予測】
※マヨネース・マヨネース風調味料は2005年ドレッシング含む。
支出が厳しい品目の代表的なものが米である。一方で支出を伸ばしている品目の一つに、ヨーグルトがある。次のグラフは世帯主の年代別のヨーグルトへの支出の推移を示している。グラフの動きにもあるとおり、どの世代の世帯でも支出が伸びている。洋食に合ったデザートであることや、製品の種類の増加なども大きい。健康意識の高まりからの支出増加ということもある。自社の製品や分野以外でも、支出が伸びているものとそうでないものの違いについて、社会環境の変化などから捉えて、充分に吟味する必要がある。
【ヨーグルトの支出推移と予測】
【ヨーグルト 総支出(規模)の推移と予測】
―食に関するマーケティング活動の重要性―
給与の回復傾向が背景にあり、価格の上昇などが合わさって、食料支出の推移は上昇傾向にある。一方でエンゲル係数の推移にもあるとおり、家計は厳しくなっている。食への支出も、可能なら無駄をなくしたいと考えることになる。加えて少子化や核家族化が進むことで、食材・食品の小口化や保存性を重視した購入意識も強まっていくと予想できる。
しかし他の消費と比べると、以下の点で食の消費には期待が持てると考えられる。
@他の消費財に比べ単価が安い。
Aイベント等との相性が良い。
B情報化社会との相性も良い(SNS等での情報拡散)。
C食は消費(エネルギー)から貯蓄(身体づくり・健康増進)へと目的を変えることできる。
D季節感が薄らぎつつあるが、それを逆手に取った販売機会を得ることもできる。
E業界を超えた活動の可能性と必要性とその結果の需要喚起(外食における和食文化啓もう活動など)。
Fもっとも身近な娯楽としての食の手軽さと奥深さ(新しい発見や体験)。
製品や価格以外に情報チャネルとしてのコミュニケーションをどう密度の高いものにしていけるかが、メーカーや小売業(販売店/外食)の一つの課題である。
その結果として、消費者の食への意識をポジティブなものに変え、食の消費の積極性や多様性、継続性、自主性などを創出することである。
外食で新しい食を知り、それを家庭で再現し、さらに研究熱心になって食べ歩きや情報取得に熱心になる、という好循環を作ることが大切である。
食を「消費」ではなく、「楽しみ」(ストーリー)や「投資・貯蓄」(身体づくり・健康増進)の要素に変え、個人が「自己表現」の一つとして毎日の食生活を送るようになるのが理想である。そのような意識の高い人たちがインフルエンサーとなり、次の世代に受け継がれていく流れが必要であると言える。
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