テキスト ボックス: T.人口動態と消費の展望

 

 

 

 

 ※グラフやその数値を知りたい方は、左フレームContents内の「Data」をクリックして下さい。

市区町村別の人口趨勢は下フレームの「SheetDB」から選んで下さい。

 

 

1.消費者規模

1-1 総人口の推移 

 ■人口成長率の推移と企業

下のグラフは、日本の総人口(常住外国人を含む)の5年ごとのCAGR(年平均成長率)の推移である。

1990年から1995年の5年間は、1年間の平均成長率で0.3%とプラス成長だったのが、次の5年間では0.2%に下降し、さらに2010年から2014年の5年間では、平均でマイナス0.2%にまで落ちた。これまで人口減少は研究機関や政府の発表、ニュース等で報じられてきたが、実感は伴わなかったと思う。しかし、大手予備校の校舎の閉鎖や全国展開の家電店の店舗展開の見直しなど、その影響が2015年以降は具体的に表れはじめることになるだろう。

 

人口の減少は全国均一に起こるわけではない。近年の例にあるような、人口の多い都市やその周辺に人々が移動する傾向が認められ、仕事の機会や各種サービスの充実した都心部への人口移動により、「人の集まる地域はより集まり、人の集まらない/転出していく地域はよりその傾向を強める」懸念がある。人口減少が、地域によっては早く進行する危険性があるわけである。

 

一方で、人口減少の地域の住人は、大手小売業の店舗の撤退などがあれば、生活の利便性が損なわれてしまう。それはまた、流通に対する新しいニーズや地域の状況に適した仕組みやサービスへの要望が発生する機会ともなる。

 

日本のあらゆる地域で人口減少が起き、プラス推移を維持するのは限られた地域である。そのプラス推移も、高齢化が進むことでやがては人口減少に向かうことになる。

 人口の減少する地域や事業領域から撤退しターゲットを見直すことも重要だが、減少することを逆にチャンスにできるようなビジネスへの転換も、今後は強く求められるようになるだろう。

 

【総人口の推移】

   <年平均成長率の推移>               <総人口数と前年比の推移>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前のグラフで示している人口総数の減少率は、年間平均でマイナス1%にも満たない。2012年から2014年までの各年の前年比は、マイナスの度合いの拡大は収まってきているようにも見える。しかし、現在の出生率の改善率で長期的に見ると、やはり人口減少は免れないことになる。

 1億人の人口を維持するには出生率を2.07まで高めなければならず、現状の出所率の改善の延長線(過去3年間の伸び率からの弊社推算)では、2014年が前年よりも出生率が下がったことから、その数値に達するのは2045年よりも先になる計算となる(下グラフ)。

 

 【出生数と出生率の推移】              【出生率の将来推計】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■年代の変化+消費者心理の変化=消費者の実需

総人口が減る中で、加齢や少子化の影響で年代別の人口は大きな差を生じる。減少率の大きい年代が販売ターゲットならば、人口減少分を上回る販売数量を確保しなければならない。

一方、加齢による移行で増える年代は、それらがすべて逆に作用することになる。「減る年代は逆風の中」「増える年代は追い風の中」でのビジネスとたとえることができるだろう。

 

「逆風の中」で消費者意識が商品の購入等にマイナスに変化すれば、結果はさらに思わしくなくなる。2014年の夏に大手予備校の代々木ゼミナールが校舎の7割を閉鎖すると発表したのは、若年層の減少のみならず、「浪人」を選択する学生が減ったことが大きかった。

 

今後、人口減少が進むにつれ、販売地域やターゲットの違いによりビジネスの成果が大きく異なることが予想される。年代や地域別の人口の推移と、さらに個々のニーズの変化をウォッチし、先を見越した事業計画を組まなければならない。

 

 

1-2 性・年齢別の人口動態

■性・年齢(5歳階級)別人口構成比の変化

 下のグラフは1990年と2014年の年齢(5歳階級)別の人口構成比の変化を表している。

1990年の二つの人口の山である10代後半と40代前半は、2014年には40代前半と60代へと移動した。現在の40代は、10代後半の頃の文化や習慣、当時の趣味などを継続、あるいは忘れないでいる人たちである。その世代が今、規模の上でひとつの大きなマーケットとなっている。同様に、60代という現役を退いた年代も、一大マーケットと見ることができる。

 

10代や20代向けの製品やサービスが1990年と比べると、計算上、人口構成比の変動で現在は3割程度売れる可能性を喪失してしまったことになる。反面、60代は1.5倍ほどに拡大した。

ひとつの企業がその商材やターゲットを変更するのは容易ではないが、縮小するターゲットよりも拡大するターゲットに可能な限りシフトすることは、強く求められることになるだろう。中高年向けの雑誌や大人向けの音楽教室など、これまで若い世代を対象にしてきた商材のターゲットを見直したことで成功した例はいくつもある。一方で、若い世代のニーズやウォンツを確実に捉え、合致した商材を提供し、将来も継続的に利用・購入してもらえるような関係作りも求められることになる。

 

  【 性・年齢(5歳階級)別人口 1990年と2014年の比較】

   <1990 H2>                    <2014 H26

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■性・年齢(5歳階級)別人口の年平均成長率

下のグラフは、年齢(5歳階級)別の人口の平均成長率(2010H22から2014H26年)を表している。結婚や出産、家の購入などで消費が増える30代の減少率が大きい。一方で、人口が増加する世代としては、給与の総額も上昇するが学費などもかさみ、反面、子供の親離れなどから自由な時間を楽しみはじめる40代の人口が増えている。

下の表で見ると、40代前半は男女ともに2010年(H22)から2014年(H26)の四年間で1割以上増えた。一方、30代後半は男女ともに同期間で1割ほどの減少である。単純に考えると、30代向けの商材は企業努力をしてもベースが1割の売上減となり、40代前半向けの商材では企業努力は同じでも1割ほどの売上増加の機会を得たことになる。

 

  【性・年齢(5歳階級)別人口の年平均成長率(CAGRH22-H26と人口総数】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■年齢階級別 男女比率の推移と未婚率の推移

男女間の比率にも変化が見られる。下のグラフにあるとおり、高齢者ほど女性の比率が高い。多くは夫に先立たれた結果だが、夫(男性)が残るより、社交的で服装などにも気を使い、外出が好きな女性が残ることで、高齢層でも新たな市場の可能性が残されるかもしれない。

 

もうひとつ指摘できるのは、1990年(平成2年)に比べ、2014年(平成26年)のグラフが右にシフトしていることである。食生活の改善や医療の発達等で、男性高齢者の寿命は伸びており、「夫婦で楽しむ老後」や「夫婦で長生き」という新しいテーマも見えてくる。また、熟年離婚を過ぎて高齢者離婚などもありえ、高齢同士の出会いや初婚・再婚の機会も増えるかもしれない。

少子高齢化による人口減少でこれまでの消費の規模は縮小するが、一方で新たにニーズやマーケットを生む変化の兆しもある。

 

【年齢階級別 女性比率の推移】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 下のグラフは未婚率の状況を表している。男女が結婚することで子供を持つ機会が生じる。子供をもうけなくても、住む家が大きくなり、家電品も二人世帯分の中型以上のものが選択されるようになる。車を購入する機会や、休日は二人で出かけ、映画や食事を楽しむ時間も生まれるだろう。未婚率の上昇は確実に経済にとってマイナスである。

 

  【男女未婚率の推移】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  【男女別 生涯未婚率の推移】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で、単身者でも楽しめるような娯楽スポットなど、これまでグループや家族連れの需要が中心であったものを見直すことで、ビジネスのチャンスを得ることもできる。そこに新たな出会いがあれば、なお多くの意味で波及効果は大きい。

 

  【恋人について(独身者)】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■性・年齢(5歳階級)別人口構成比の推移

 下のグラフは男性の年齢階級別の総人口の推移をグラフで表している。

同じ10代以下の世代でも10代後半は微減で、10代前半以下の年齢では減少率がやや大きい。後に続く世代が少ないことから、10代後半も先行き減少傾向が強まることが予想できる。

20代から30代では、30代後半の減少率が20代と30代前半よりも大きい。40代と50代では、40代が増加し、50代は横ばいからやや減少気味の推移である。

60代以上では、60代前半の男性の人口は減少しており、高齢化社会とはいえ、年齢の高い世代のすべてが増加しているわけではない。60代でも、仕事を定年退職した後も就労を希望するであろう60代前半と、退職後の生活にも慣れ、本格的に老後について考えはじめているかもしれない60代後半では、思いや行動は異なる。まだまだアクティブである70代も、前半と後半では加齢の影響による体調や意識の変化、そこに表れるニーズも異なると想像できる。

 

  【年齢階級別総人口の推移<男性>】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同様に、下のグラフは女性の人口推移を年齢階級別にグラフで示している。

 5歳ごとの年代の人口比率とその推移も、男性とほぼ同様の傾向である。ただ女性は就業率の変化や、一般事務職から専門職への移行、まだ少ないが女性管理職の登用など、年齢以外の要素の変化にも注目すべきである。

世帯収入を安定させる上でも主婦の就業機会が増えるだけでなく、自宅での起業などもあり、少子化対策としての労働環境や条件・規定の見直しによる出産機会の創出など、既存の社会の仕組みに影響を与える要素が、女性とその周辺には多い。

 

女性の就業率が高まることで、例えば主婦が家にいてセールスの電話に出る機会も、チラシを閲読する時間も、購読する女性誌の購読冊数や求める内容も、テレビの視聴時間帯も変化していくことになる。既存の女性対象のマーケティング手法やコンテンツの内容も、それに適合させていかなければならない。

 

 【年齢階級別総人口の推移<女性>】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.都道府県別の人口動態

2-1 成長率の比較

 ■都道府県別 平均成長率

 下のグラフは2011年から2014年の都道府県別の人口の平均成長率を左から高い順に並べた結果である。平均成長率でマイナス推移を免れたのは、東京都をはじめとした8都道府県のみである(8都道府県には震災の影響で人口の移動等の変動が大きかった県も含まれている)。

 棒グラフは総人口の大きさを表しており、人口成長率の折れ線グラフと重ねて比べると、人口の多い地域ほど、人口の増加(あるいは減少幅の縮小)の機会が大きいと読み取ることができる。

 総人口の平均成長率の高さで注目できるのは、東京都と近在の県、そして沖縄県、愛知県、滋賀県である。

 

 【都道府県別 総人口と平均成長率 2011年〜2014年】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■都道府県別 年代別構成比

 次のグラフは都道府県別・年代別の人口構成比を表している。人口の少ない地域で60代以上の比率がやや高い傾向がある。

今後、高齢化にともない各地域で60代以上の構成比が増していくが、一方で、就労機会やビジネスチャンスを求めて都市部への若い世代を中心とした転入も起こる。経済的な理由、都心部の家賃等の低下、大資本の都心部への投資集中等で、都心部への人口移動が早まることもあり、地域ごとの年代別の人口の構成比に、これまでと異なる動きが生じることもありうる。

 

 【都道府県別 年代別人口構成比と総人口 2014年(H26)】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2-2 都道府県別の年代構成・推移

 ■各年代 都道府県別の構成比

下の表は、各都道府県の各年代における人口の集中の度合いを構成比で表している。総人口の大きい地域に各年代も集中しているが、例えば東京都の20代は全国の20代の12.9%、30代は全国の30代の12.8%を占めている。一方、60代以上の人口は東京都も率は高いが、他の府県はそれ以上で、20代や30代、40代ほど東京に集中しているわけではない。それだけ地方の県が高齢化していることになる。

 

【各年代の都道府県別の総人口構成比 2014年(H26)】※構成比は各年代の縦で100

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■都道府県別 年代別の平均成長率

 下の表は2011年から2014年の3年間の都道府県別の各年代の人口の平均成長率である。

 東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県などの首都圏は、総数での平均成長率が他府県よりも高いか、あるいは減少率が少ない。千葉県、東京都、神奈川県では10代の人口が増えており、先行き20代、30代へと移行し、経済上の貢献が期待できる。

東京都と埼玉県、神奈川県は40代、50代という働き盛りで年収の高い世代の人口も、他府県に比べ増加率が高い。一方、同時に70代、80代の増加率も高く、大阪府、京都府、愛知県、滋賀県でも同じ傾向が見られる。これらの都府県は若い世代の増加が期待できるが、高齢化も進むことになる。

 

【都道府県別 各年代の総人口の年平均成長率(20112014年)】※上位下位は縦の範囲で算出。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■都道府県別 年代別の前年比

2013年から2014年にかけての前年比でも、平均成長率の推移とほぼ同じ動きが見られる。大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県では10代の人口の前年比が、首都圏と同様にプラスまたはマイナスの率が低い結果となっている。

 

【都道府県別 各年代の総人口の前年比(2013年〜2014年)】※上位下位は縦の範囲で算出。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2-3 都道府県別の人口移動の状況

 ■都道府県別 転出入の状況

下のグラフは、日本人の人口と転入超過率について表している。

2013年から2014年の人口増減率の高い(あるいは減少率が少ない)都道府県を左から並べている。傾向として、人口の増加率の高い地域は転入超過の率も高いことがわかる。新生児の誕生も人口増につながるが、転入者が増えるような魅力的な地域であることが、人口を増やし、関連して経済を成長させることになる。

 棒グラフは日本人人口を表しており、概ね人口の多い地域に人が集まる傾向があると読み取れる。

 

 【都道府県別 転出入の状況】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 下のグラフは、人口・転入超過率等と人口の増減等との相関を表している。

人口規模の大きい都道府県は人口の増加率(2013-2014)の相関係数は0.70となり、プラスの相関である。人口規模が大きい都道府県ほど、人口の増加率が高いか減少率が少ないことになる。

 人口の規模と転入超過率についても0.78というプラスの相関であり、人口規模の大きい都道府県ほど転入超過となりやすいと説明できる。

 人口の増加率と転入超過率では、転入超過が人口の増加への貢献度が非常に高いことを意味している。

 

 【人口と転入超過率等との相関(都道府県別)】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■主要都市別 転出入の状況

 下のグラフは同様に、主要都市別の転入の状況をまとめている。

 東京都や神奈川県など、転入超過率がプラスかあるいはマイナスが小さい都道府県内の都市で人口増加率が高く、グラフの左側に位置する。

 

 【主要都市別 転出入の状況】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同様に都市についても人口増加や転入超過率との相関を見てみる。

 人口規模と人口増減率の相関は0.42であり、相関はあるが強くはない。大都市であっても、人口が減少傾向にある県や府に所在する場合、人口増加の期待値は下がることになる。

 その都市の転入超過率と人口についても相関係数は0.60であり、同様のことが言える。

 人口増加率と転入超過率は0.90という高い相関となり、人口を増やすには転入者が集まる都市でなくてはならないことになる。そして都市としての魅力も大切だが、その都市を含む都道府県の全体が人を呼び寄せられる魅力的な地域である必要がある。

 

 【人口と転入超過率等との相関(主要都市別)】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■人口増加率上位都道府県の特性

下のグラフは人口増加率上位の都道府県の地域特性等を俯瞰した表である。平均年齢で見ると、上位の都道府県は下位(高齢者が少ない)30%以内にあり、若い世代が他府県よりも多い。出産による年齢の若返りもあるが、若い世代の転入者の多さも要因として大きく、就学や就職で若い世代が集まるかどうかは、その地域の人口の先行きを決める重要な要素である。

 

地域的な差としては、若い単身者が多い東京都と、家族世帯中心の沖縄県や埼玉県などが特徴として挙げられる。沖縄県は、転出者の帰郷と定住の他、コールセンターなどの誘致による雇用創出、温暖な気候から高齢者の移住などで人口が増えてきた。沖縄県の就業者の業種別比率では、宿泊業や飲食業の比率が他府県よりも高く、観光産業の重要さがうかがえる。観光資源が魅力的な地域ならば、観光客数が増え、それによる経済効果と就労機会が拡大し、転出の抑制につながる。また観光客の一部がその土地を気に入って移住するなどもありえないことではなく、観光産業が人口減少抑制につながるひとつの手段となるだろう。

 

滋賀県は京都や大阪への通勤圏であり、企業や大学などの移転が重なり、ベッドタウンとして人口が増えている。滋賀県も琵琶湖という観光資産があり、人が集まる要素がある。

 

 【人口増加率 上位都道府県の地域特性等(1)】 ※色分けは全国順位による。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【人口増加率 上位都道府県の地域特性等(2)】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.市区町村別の人口動態

3-1 地域特性と人口推移

 ■市区町村の総人口・面積・年代構成等と人口推移との相関

 以下は、平成17年と平成22年の国勢調査データから市区町村の人口増減と地域特性との関連性についての考察である。

 市区町村の人口増減率と人口の総数の大きさは高い相関関係にはない。前述の都市の転入超過率と人口総数との関係と同様に、人が集まる都道府県や都市の内部、あるいは周囲でないと、人口の大きな市区町村であっても人口増は期待できないことになる。その点では、大型の市区町村でも将来は大きな人口減少が起きないとも限らない。

面積と人口密度では、大都市圏などの面積が小さく人口密度が高い地域と人口増減との相関が高い。平均年齢は、若い世代が集まる都心部での人口増があることから、平均年齢が高い地域ほど人口増減との負の相関がある。その市区町村の人口推移を考察する上では、平均年齢の高さを注意したい。

 

下右グラフは年齢3区分による人口の割合と人口増減率の相関である。15歳から64歳の割合との関係性が強く、転入超過率と人口との関係でも見たとおり、子供が増えて成人になることで人口が増えるよりも、学業目的の学生や仕事の関係での成人や成人の近い年齢の人々の移動が、人口増への影響として関係性がありうる。

 外国人については人口増が多い都市部のみに集中しているわけではなく、工業地域での就労など都市部以外での居住率も低くない。外国人の人口は非常に少なく、人口増への貢献度はまだ低いのが現状である。

 

 【市区町村の人口増減と地域要素との相関(1)】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■市区町村の世帯員構成・就労業種と人口推移との相関

 下左グラフは、市区町村の家族形態と人口増減率との相関を表している。

 老齢夫婦のみの世帯と老齢単身者の世帯が人口増減率との負の相関が強い。過疎化などの懸念のある地域の世帯構成の典型的な例である。

 

人が集まり人口が増える地域では、夫婦と子供から成る世帯が多いのは当然の結果である。単身者の転入も人口増につながるが、それらの人々が地域内で婚姻し子供をもうけることで、その地域の人口増(人口減少緩和)がさらに期待できることになる。

 

下右グラフは、市区町村の就労者の業種別の構成比と人口増減率との相関を表している。農林漁業は都心部から離れた地域での業種であり、これらの地域での人口減少が問題視されているとおり、負の相関が強い。

市区町村についても、人口増が期待できる地域では、情報通信業や卸・小売業、金融業、保険業などの就労者の比率との相関が高くなる。人口増加(あるいは減少緩和)傾向のある市区町村では、これらの業種の就労者の増加が期待できる。

 

一方、医療や福祉、教育・学習支援などのサービスは人口の大小や増減に関わりなく地域の住民や利用者へ提供しなければならず、人口の減少地域でも就労者の構成率は低くない。そのため将来、人口縮小の地域では、これらのサービスへの従事者が不足し、コスト的にサービスや施設の維持が困難になることなどが懸念される。公共性の高いサービスのみならず、生活関連サービス業、娯楽業、観光産業と関連が強い宿泊・飲食業なども同様な危険性を指摘できる。サービス就労者が人口とともに減少した場合、施設やサービスの体制をどう維持し、住民の要望にあったサービスを提供できるかが問われることになるだろう。

 

 【市区町村の人口増減と地域要素との相関(2)】 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3-2 主要市区町村

 ■国勢調査からのランキング

 下の表は、平成17年から平成22年にかけて人口の増加率が高かった100の市区町村である。

三重県朝日町は宅地化による住宅地の人気で人口が増え、現在でも継続している。名古屋市をはじめ大都市への通勤圏でもあり、鉄道、交通の利便も良いことがその背景としてある。

 

 【人口増加率 上位100市区町村 H17H22

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【三重県朝日町の人口・世帯数の推移】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■東京都の市区町村別人口推移

 下の表は、平成2711日現在の人口等の推移を東京都の住民基本台帳をもとに表している。

 区部やその周辺の市の人口増が目立ち、同じ東京都でも人口推移がマイナス傾向の地域もある。

 

 【東京都 市区町村別 人口と世帯数 H2711日(H261月〜12月)前年比】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■東京都の業種別 就業者比率

都心部では金融保険業、情報通信業、不動産業、そして卸売業・小売業などの業種の就業者の比率が高い。郊外に向かうに従い、製造業や教育、学習支援、医療福祉関係の業種への就業者の比率が増加する。

 

 【東京都の就業人口比率】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 下のグラフは、居住している人口と昼間の人口の比率と、就労者の業種比率について相関を見た結果である。

昼間の人口比率が高い地域では不動産業、物品賃貸業、金融保険業などの業種への就業率が高くなる。専門技術サービスや情報通信業も、人口増減との関連性が高い。

 

 【就労者の業種と昼間人口との相関】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■地域別 人口予測

厚生労働省所属「国立社会保障・人口問題研究所」の都道府県別の人口予測値(平成253月推計)をもとに、平成17年から平成22年の国勢調査の結果の平均成長率と、それ以後の予測値を5年間ごとの平均成長率で表したのが以下のグラフである。

どの都道府県でも減少が免れない結果となっている。沖縄県も2020年から2025年にかけての平均成長率では、-0.04%とマイナス推移へ移行する予測である。

 

 【都道府県別人口予測 平均成長率の推移】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市区町村別、年齢別の予測値については、国立社会保障・人口問題研究所を参照されたい。

 

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